2026年度受賞作品

COMMENT

審査講評

【審査員】

フォトグラファー

杉田 知洋江先生

視覚のパレードを超えていく「丁寧なクリエイティブ」と、身体を動かす交通広告の未来

今年度も鮮やかなカラー戦略と旬のタレントを起用した、視覚的に華やかな作品が数多く揃いました。 街や駅を彩る広告としてどれも非常に目立つ一方、似たようなアプローチが増えたことで、 ブランドごとの個性の区別が難しくなっている「同質化」も感じます。

そのような中で、強い存在感を放っていたのが Uber Eats Japanの広告展開です。 ブランドカラーの「グリーン」を単なる色のインパクトで終わらせず、ポスターからCMに至るまで、 細部まで丁寧な世界観を一貫させていました。表現の選択肢が無数にある今だからこそ、 ディテールへの偏愛がブランドの輪郭をはっきりとさせるのだと、改めて教えられます。

「丁寧さ」や「媒体特性への深い理解」は、今年の受賞作すべてに共通します。 車両メディア部門のポカリスエットが展開した瑞々しいビジュアルの数々は、 乗客との距離が近い車両メディアのみならず他媒体でも、移動空間に純粋に楽しい気持ちよさを感じます。

駅メディア部門の大丸松坂屋百貨店の「百様図」は日本らしい引き算の美学、 用の美がつまった大変丁寧につくられている、とても好きな広告です。 早くお買い物に行きたくなります笑 駅メディアの利を活かし、 空間全体を使ったダイナミックな世界観のNetflix「ラヴ上等」の対局に、大丸松坂屋百貨店「百様図」、 キリンビールの「夏空に氷結」のシンプルさは余計な雑音をノイズキャンセルし、かえって駅空間のビジュアルを引き立てました。 毎回シンプルな言葉で楽しませてくれる横浜岡田屋もそうですね。

駅ポスター部門のティグリス・ジャパンをはじめとする、 おしゃれな雑誌のページをめくっているかのようなグラフィカルな駅ポスターが増えているのも、 こうした静かなるデザインの力が求められているからだと思います。

その感性をmovieに落とし込んだデジタルメディア部門の新生フィナンシャルの大悟さんはまさにグラフィカルな動画。 モエ ヘネシー ジャパンやコクヨのようないくつかのストーリーを展開させる作品も最近よくみられ、 ブランドの世界を楽しませてくれます。そしてこれらは媒体次第、縦横、どちらでも強い画作りを大いに助けているのが、 東西のイケメン大悟さんとハリソン・フォード、最高です。

空間プロデュース部門でも、近年の新宿の横長特性を活かした疾走感のある表現や、 立体的な柱巻き広告など、駅が「通る」場所から「体験する」場所へと定着してきました。 最優秀部門賞のアディダスの他にも、今年はたくさんのアスリートを起用した作品が多かったのは、 いまや、日本のアスリートが世界で活躍されているからでとても誇らしいです。

そして、交通広告が持つポテンシャルを最も立体的な広がりで見せてくれたのが、 メディアプロモーション部門のユニバーサルミュージックの Mrs. GREEN APPLEです。 いまや音楽、広告のアイコンである彼らの展開は、単に新譜を告知するものではありません。 「CDを聴く」という、もう一歩深い音楽の領域へ生活者を踏み込ませる仕掛けが秀逸です。 駅で広告に出会い、家に帰ってCDを聴く。視覚を刺激されたファンが、 次の掲出駅を目指して実際に「身体を動かす」。このリアルな行動を伴う立体的な広がりは新しく、 まさに交通広告ならではのエンターテインメントの形を提示してくれました。

スマートフォンの中で指先ひとつで完結する時代だからこそ、あえてリアルな「身体性」を呼び起こすこと。 これこそが、デジタルには真似できない交通広告の逆襲であり、未来の姿なのだと思います。

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