2024年度受賞作品

COMMENT

審査講評

【審査員】

コピーライター/
クリエイティブディレクター

国井 美果先生

今年のグランプリはNetflix『サンクチュアリー聖域―』の「ジャイアント猿桜像」。相撲の聖地・国技館の最寄り、JR両国駅3番線のホームに突如あらわれた全長25メートルの巨大な力士像は、圧倒的なインパクトを残しSNSでも拡散され話題となりました。相撲ファンだけでなく通勤通学途中の誰もが「なんだかすごいものを見てしまった」という、ドラマに通じる痛快な後味を感じたのではと思います。グラフィックのコピーは「番狂わせろ。」。逆境に負けずに角界の常識に真っ向から挑む主人公を彷彿とさせる、なんともパンクな一言です。ドラマ自体の魅力や熱量と一体となって、交通広告の臨場感を体験できる、巧みなプロモーションです。

空間プロデュース部門のアディダスジャパン 「走り心地、ぶっちぎり。SUPERNOVA」は、こちらもまた臨場感あふれる視覚効果で、スポーティな楽しさいっぱいの表現でした。 デジタルメディア部門のキリンビール「キリン 上々 焼酎ソーダ」は、難読漢字の読み方クイズをフックに、通勤通学客の知識欲をすくい上げて巧みに商品へと着地させていました。 車両メディア部門のJRグループ「魅力上等いばらき」は、地元ヤンキーのキャラクターと、借り物ではない言葉とで、独自の魅力を再構築したデスティネーションキャンペーンとなっていました。 メディアプロモーション部門の日本情報経済社会推進協会「ちゃんと隠さないと、個人情報は特定される。」は個人情報保護への理解に際して、誰もがわかる偉人の名を、隠し文字のクイズ形式にしたことで視覚的な引力が増し、興味関心を掻き立てていました。 駅メディア部門の鳥羽市温泉振興会は、「海女の湯治場 鳥羽」が強烈なキャッチコピーとして異彩を放っていました。海女さんの写真も惹きつけられる魅力がありました。 駅サインボード部門のサントリー「BOSS」は、「自販機ガコン缶コーヒー」という最小限の言葉で、自販機というものを働く人の心の給水所として、見事にシンボライズしていました。

JR東日本賞の「弘前大学」学ぶ街は、暮らす街でもある。は、学びやすさと住みやすさを共に訴求することで、「弘前」というブランドを相乗効果で強くしていました。 また最近は、山手線などで展開されている「TRAIN TV」をよく見かけますが、電車の中のテレビ局というだけにお笑いやドキュメンタリーなど車内における新しい表現へのチャレンジを感じ注目しています。ゲームやYouTube、TikTok、コミック、LINEなど個人個人が手元で見つめているものに対して、公共のコンテンツとしてのポテンシャルに期待しています。 なによりも優れた交通広告は人々の日常のワンシーンとなって、通勤通学体験を、そして社会を、より良く照らす力がある。その表現領域はまだまだ限りのない可能性の宝庫であると思うことができた審査会でした。

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